AMBITION

テクノロジーが広げる挑戦への可能性

Skier三浦雄一郎

01活動の根源や意義、目的とは

−これまで幾度となく自然と向き合ってきた三浦さんの活動の根源や意義、目的とは?

子どもの頃から親父に連れられて山岳スキーをしていました。雪山や大自然を楽しんでいましたね。景観的にも条件的にも素晴らしい世界で、流氷や凍った山、光が当たり光っている景色など、この世のものとは思えない美しさです。そんな自然の中でスキーをすることが最高の喜びです。自然は生きる力をくれる存在です。エベレストが僕をトレーニングへと導き、そして結果として健康を手に入れることができる。山は僕にとって最高のホスピタルですね。
「最強のスキーヤーや登山家になりたい!」という気持ちで日々トレーニングを続け、山を走り回ってきました。常にもっと高い山に登りたいと上を目指し続けた結果、世界7大最高峰に登ることも実現できましたし、スキーで滑ることもできました。

活動の根源や意義、目的とは

常に好奇心を持つことが大切ですね。僕の場合「あの山に登ってみたい」「あの山から滑ってみたい」という気持ちを持ち続けることです。エベレストに初めて登った時、運悪く曇っていました。だから、晴れた時の頂点をこの目で見たいと思い、再度挑戦することにしました。今の目標は、ヒマラヤ山系8,201m峰のチョーオユーの山頂からスキー滑降することです。70歳でエベレストに挑戦し、その前年に一度チョーオユーに登ったんですよ。その時「しまった!こんなにいい山ならスキー板を持ってくるべきだった」と思いました。スキーヤーの心をくすぐる斜面がたくさんあったんですね。70歳、75歳、80歳と節目の年にエベレストに登ってきましたので、85歳の際にはチョオユーにチャレンジします。親父は100歳超えてもスキーを楽しんでいました。僕も彼のように幾つになっても山を楽しみたいですね。100歳超えてもヒマラヤに登り、のんびり散歩し、景色や雪、自然を楽しみたいですね。

02テクノロジーの進化は人間にどのような影響をもたらすか

−アスリートとして、三浦さんがチャレンジする時に欠かせない道具や服の存在は?テクノロジーの進化は人間にどのような影響をもたらしていると思いますか?

スキー板は僕にとって、足についた魔法の翼のよう。そして雪の上を飛び回っているような気持ちにさせてくれます。雪の世界は寒いし冷たいし、厳しい条件も多いですが、ウエアはどんどん進歩し、本当に恵まれた時代だなと。僕が子供の頃は毛糸のセーターが最高の防寒着でした。もし技術が昔のままだったら、おそらく僕は60歳くらいで登山をやめていたと思います。80代の今でも山を楽しめているのはスキー板、ギア、ウエアを含める全ての技術が進歩していて、人間が最高の力を発揮できるサポートをしてくれているからだと思っています。道具の進化と共に医学も進歩し、僕はとても助けられました。

テクノロジーの進化は人間にどのような影響をもたらすか

テクノロジーは人間の可能性を広げてくれますよね。これまでは年をとったら無理はするなというのが当たり前であり、守りの人生に入ってしまう人も多かったと思います。でも、それが急速に老化していく原因にもなるんですね。医学や技術が進歩し、年をとっても無理がきく、年を忘れてチャレンジできる時代になりました。それが強く生きていけるきっかけにもなると思います。生きがいを感じると、「生きていて良かった」「もっと生きたい」と感じますよね。おもしろく楽しく、そしてちょっとハードに生きることが大事。人間は不可能なことを可能にしながら進化してきました。その延長で、常に未知のことにチャレンジし続けて欲しい。その気持ちは自分自身の中にもあります。まだ手づかずの、何回行っても素晴らしい大自然の山は地球上に無数とある。まだ人間の知らない様々な場所や謎など、無限にチャレンジする要素を見つけ、不可能を可能にして欲しいですね。

Credits -
  • Interview date2017
プロスキーヤー・登山家

三浦雄一郎 Yuichiro Miura

1932年、青森県生まれ。北海道大学卒。1960年代にプロスキーヤーとして活躍。970年エベレスト・サウスコル8,000m世界最高地点スキー滑降(ギネス認定)を成し遂げ、その記録映画 [THE MAN WHO SKIED DOWN EVEREST] はアカデミー賞を受賞。2013年80歳にて3度目のエベレスト登頂〔世界最高年齢登頂記録更新〕を果たす。