スポーツを通じた社会への貢献

01創業初期の雰囲気や思い出
−長きにわたり会社を見てきたと思いますが、創業初期の雰囲気や思い出を教えてください。
津澤メリヤスを創業したのは1950年、会社としてスタートしたのが1951年。僕が生まれたのが1953年です。工場が遊び場になっていましたね。家と工場が繋がっていたので、裁断場やミシンの間を三輪車で遊んでいました。ミシンの動く音や、編み機の音を聞きながら育ってきました。所々にスローガンが書かれた張り紙が貼ってありましたね。特に印象に残っているのが、紙に書かれた6大学の野球ユニフォームのストッキングのデザイン画。こういうものを作っているんだなっていうのは、子供ながらに見ていました。あの町工場がだんだんと大きくなり、ちょうど東京オリンピックの直前くらいに今の場所に移って大きな工場が完成しました。とても記憶に残っています。東京オリンピックの時は、ちょうどカラーテレビが出始めた時で、街頭テレビでみんなで観戦したんだけれど、“わーっ”と盛り上がるわけですよ。みんなで「うちの会社が作ったものだ」って。
札幌オリンピックの時は高校生になっていましたから、ある程度うちがやっていることはわかっていたし、スキーもやっていたので非常に興味がありました。フザルプ社と提携して、フランスの人たちがうちの工場に来ているのも見ていました。富山の社員たちは着物を着てお茶を出し、本当に日本らしいおもてなしでお迎えしていました。

02ものづくりのこだわり
−ゴールドウインのものづくりのこだわりを教えてください。
特に海外と技術提携しながら色々な国へ行き、これまで経験のなかった技術を学んできました。海外はこんなやり方をしているとか、職人が実際に見て、学んで、どんどん海外の技術を導入し、その技術を突き詰めていく。手先が器用なので、向こうの人より極めていくことについての能力に長けていたのかもしれないですね。うちの人は、それぞれのブランドに惚れ込んでいるんです。いいなと思うブランドをもっともっと良くしようと。相手の意図することを理解して、それをしっかりと商品に落とし込む。相手が予想している出来栄えよりも、もっと突き詰め、思いを込めて作ることは、今でも変わりません。
03これからの社会や環境との関わり
−ゴールドウインはこれからの社会や環境とどう関わっていくお考えですか?
すべての人にスポーツの楽しさや素晴らしさを理解してもらいたい。いろいろなハンディキャップを乗り越えて、楽しめるものを提供していきたいと取り組んでいます。人はみんな、それぞれ何らかのハンディを持っていると思います。でも、みんなが同じように健康で豊かな生活をできるように、お互いが支え合っていかなきゃいけないんじゃないかな。そのために、いろいろなハンディを克服してスポーツを楽しむことができるようなウエアの開発に力を注いでいます。従来になかった画期的な開発への取り組みを進めることで、うちのやりたいことが実現できるんじゃないかと思っています。

そして、自然と共存していくこと。うちは富山の自然に恵まれた環境の中で厳しい思いもしてきました。でも工夫してどうにか暮らしてきた。逆に、共存できる形を見つけないといけないと意識するようになりました。この間、明治神宮の話を聞いてとてもびっくりしました。大正時代、荒れ地で立派な木がなかった場所に、100年先を見据えて苗木を植えて神宮の森を作ったそうです。当時の写真を見てみると鳥居はとても立派だけど、木は若木で鳥居よりもはるかに小さい。それが徐々に成長し、100年後には鳥居をはるかに超える鎮守の森が出来上がった。自然に逆らうのではなく、自然としっかりと共存できるような形とか、将来まで続けられることが大事ですよね。

04変わらないもの
−ゴールドウインの変わらないものは?
根本に流れているのは平和で豊か、そして健康な生活を送れるということ。そのためにはスポーツをして、体を動かし、精神的にもストレスをためて欲しくない。先代が創業した直後にスポーツを自分達の事業領域に決めたことはアドバンテージだった。戦後復興期の厳しい状況の中でスポーツに未来を託し、期待を寄せて事業領域に定めた。健康で、何より平和な社会をスポーツと一緒に作ることができるんじゃないかって。戦後の厳しい状況を経験して、二度と戦争は起こしたくない、そんな社会になってほしくない、という思いが強かったんだと思います。その思いを継いで、これからもスポーツを通じて健康で豊かな生活をずっとサポートします。健常な人も障がいのある人も変わらずに同じようにスポーツを通じて、健康で豊かな生活がおくれるよう、スポーツウエアを通じて社会に貢献していきます。
- Interview date2017
西田明男 Akio Nishida
1977年10月、ゴールドウインに入社。1989年6月、取締役(経営企画室長)。1992年6月、常務取締役社長室長。1997年4月、専務取締役事業部門長。2000年6月、代表取締役社長。2020年4月、代表取締役会長に就任。
翔ぶ意識、ロマンを求めよ
AMBITION
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プロスキーヤー 三浦雄一郎
テクノロジーが広げる
挑戦への可能性人間は不可能なことを可能にしながら進化してきました。その延長で、常に未知のことにチャレンジし続けて欲しい。まだ人間の知らない様々な場所や謎など、無限にチャレンジする要素を見つけ、不可能を可能にして欲しいですね。
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Spiber株式会社 関山和秀
世界と調和する
ものづくりへの共感ゴールドウインのものづくりに対する姿勢やものの考え方が自分たちとものすごく近いと感じました。とにかく服が売れればいいというわけではなく、わたしたちと同じように社会課題に対する深い問題意識を持っている。
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株式会社ゴールドウイン 渡辺貴生
自然に学び、未来を想像するものづくり
想像力というのは簡単に言えば、今とは異なる未来の姿やまだ見た事のないものを頭の中で思い描く力だと考えています。自分がTHE NORTH FACEから学んだ一番のことは想像する力です。知識には限界がある一方で、想像力は世界を変える可能性が無限に秘められており、学んできた様々な物を組み合わせて、新しい価値に転換することこそが本当のメーカーの仕事なんじゃないかと考えています。