循環型社会の実現

基本的な考え方

アパレル産業は人々の生活で重要な役割を果たす一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄といった社会や環境への負のインパクトが深刻化しています。再生可能な原材料の利用や長期的に使用していただける製品の提供など、循環システムの構築が必要です。
ゴールドウイングループでは、事業活動における廃棄物削減、製品寿命の長期化や不要となった衣料の再利用など、廃棄をなくすファッションロス・ゼロによる循環型社会の実現を目指します。

環境重要課題

当社グループでは、これまで調達や生産計画の管理を徹底し、自社内での資材や製品の廃棄削減に努めてきました。そして、バリューチェーン全体で廃棄による単純焼却や埋め立てをなくすべく、新たに策定した中期経営計画のなかで、重要課題の一つとして「循環型社会の実現」を設定しました。不要となった衣類の店頭回収とその再利用の推進と共に、調達先との連携によるロス削減を進め、サプライチェーン全体での単純焼却や埋め立てのない循環型社会の実現を目指しています。
また、代表取締役社長が委員長を務めるEMS推進委員会で、製品・材料廃棄量の実績を毎月管理し、廃棄量の削減を進めています。さらに、四半期に一度開催されるESG経営推進委員会でも進捗が報告されます。

環境改善活動における戦略と具体策

廃棄物の削減

当社グループの2022年度の産業廃棄物の排出量は47.9tでした。2021年度の実績は52.5tでしたが、製品廃棄量の削減に加えて、デッドストック材料の有効活用を推進することにより廃棄物量を削減しています。また2022年度より廃棄物排出量の明細を「製品材料」と「その他」に分類し、より細かく管理することにしました。製品と材料の廃棄は全体の30%であり、ファッションロスに努めています。今後は自社における廃棄物量のさらなる削減、及びサプライチェーンにおける廃棄物量を把握し、削減方法を検討することが課題です。

廃棄物排出量(t)

※2022年度より、廃棄物排出量の明細を「製品材料」と「その他」に分類しています。

残反を活用した取り組み事例

富山マラソン大会記念商品
富山マラソン2022の大会前日の11月5日、富山市総合体育館で開催された富山マラソンエキスポ内ゴールドウインブースでは、大会記念商品としてアパレル生産工程で発生した余り生地を活用したサコッシュを販売しました。 この取り組みは多くのランナーに共感をいただき、約150点を販売しました。

カターレ富山とのワークショップ「大切に使おう!サコッシュづくりワークショップ」を開催
2022年9月24日、カターレ富山と共同で「大切に使おう!サコッシュづくりワークショップ」をゴールドウイン富山本店で2回に分けて開催しました。カターレ富山ファン・サポーターと当社従業員、約40名が参加し、アパレル製造過程で発生した端切れや余剰生地を利用したサコッシュを作成し、循環型社会ついて考える機会を作りました。

販売ロス率の低減による製品廃棄の削減

アパレル産業で大きな環境問題とされているのが、供給過剰による製品廃棄問題です。当社は2000年からの実需型ビジネスモデルへの転換を機に、発注流動管理を徹底し、調達総量を厳しく管理しています。また、販売期間中の迅速な在庫流動により、2022年度の販売ロス率を1.5%まで低減しています。

販売ロス率(%)

水資源の保全

当社グループは、節水による水使用量の削減や、排水処理、排水水質の適正な管理などで、水資源の保全に取り組んでおります。富山本店とゴールドウインロジテムは地下水を、その他の事業所は上水道を利用しており、2022年度の上水道は、上水3,574㎥、地下水159,155㎥を利用しました。
また下水は生活排水のみ14,259㎥を排水し、汚染物質の排出は確認されませんでした。

上下水道使用量

単位 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
上水道 上水 5,167 4,920 3,065 2,723 3,574
地下水 127,041 91,065 232,048 178,496 159,155
下水道 21,719 17,422 13,989 13,034 14,259

※東京本社、富山本店、ゴールドウインロジテムが対象です。

紙の使用量削減

当社グループは、ペーパーレスを推進し、オフィスにおける紙使用量の削減に取り組んでいます。資料・文書の電子データ化、電子申請システムの導入によるペーパーレス化、両面・割付印刷の推進、ノートPC端末導入によるペーパーレス会議の推進などにより、コピー用紙の使用削減に取り組んでいます。
2022年度の富山本店におけるコピー用紙の使用量は3,192kgとなりました。今後はそのほかの事業所における使用料の把握と、さらなる使用量削減に取り組んでいきます。

コピー用紙の使用量(富山本店)(kg)

資源を大切に使うための取り組み

リサイクルの推進

当社グループは、限りある資源を大切に使うために、衣類を循環型モデルに組み込む取り組みを進めています。ブランドや質・状態に関わらず、不要となった衣類を回収し、新たな製品の原料にするリサイクル活動を2008年よりさまざまなパートナー企業とともに開始しました。2022年度は12,592kgの衣類を回収しました。当社の直営店を中心とした全国167(2023年3月末時点)の店頭にリサイクルボックスを設置し、お客さまからの製品回収を進めています。さらに、富山マラソンやカターレ富山(サッカーチーム)ホームゲームなどのスポーツイベントで製品の回収を実施し、パートナー企業(河田フェザー株式会社、東レ株式会社、長谷虎株式会社、株式会社JEPLAN)の協力のもと、循環型ビジネスに向けたリサイクル活動を推進しています。

製品回収実績

大切に使っていただくためにリペアサービスを推進

THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)では、「もし素材や製造上の欠陥が原因であれば、代金は一切いただきません。その他の場合は、適正な価格で修理いたします」というポリシーを徹底したリペアサービスを行っています。現在当社では、THE NORTH FACEをはじめとしたアウトドアブランドの製品に限らず、モーターサイクルウエア、スキーウエア、アスレウエアなどもリペアの対象としており、キッズ商品(一部を除く)は無償で対応しています。
環境への関心の高まりなどにより、製品の使用期間は長期化する傾向にあり、修理の依頼も増加しています。2022年度は、東京の恵比寿ガーデンプレイスセンタープラザ1階に常設のリペアセンターを設置。また2023年1月よりGoldwinブランド製品の修理代を無料とし、2004年の時点で年間3,500件程だった依頼は、2022年度は19,966件になりました。
当社グループでは、製品リペアの需要が今後も増加すると見込んでおり、リペア体制を拡充し、修理件数の増加に対応することに加えて、2025年にはこれまで4週間だった納期を2週間に短縮することを目標にしています。また、これまで店頭のみでの受け付けていた修理依頼をWEBでも受け付けられるようにし、サービスの拡充を図っていきます。

リペア実績(件)

リセール事業「GREEN BATON」の開始

一般的にキッズ製品は子どもの成長によって約2年でサイズアウトするといわれていますが、当社のアンケートではそのうち約40%がゴミとして廃棄されているという結果が出ています。
子どもの成長によりサイズアウトして着なくなったキッズ製品を買取り、リペアやアップサイクル後に新たな製品として販売する「GREEN BATON」を2022年7月より開始しました。リセール製品にはバトンをイメージした“グリーンの引き手やネーム”が施され、他にはない一点モノの製品として新たな価値が付加されます。

アップサイクル前 → アップサイクル後

今後の課題

2022年度は順調に廃棄物の排出量を削減することができました。衣類の回収量、リペア件数も増加傾向にあり、リセール事業「GREEN BATON」も開始しました。今後は2050年度のサプライチェーンにおける廃棄物ゼロの実現のために、自社のみでなく、サプライチェーンでの廃棄物の排出量の把握と削減が課題です。